都市交通の財源

都市交通計画の目指すべき方向とそのための財政システムの転換誘導策の提案

1はじめに

 わが国を始めとする先進工業国では、20世紀後半に急激なモータリゼーションの進展により、多くの都市で自動車が中心的役割を担う都市交通体系をもつようになり、それに伴う各種の都市問題、街路交通の渋滞、自動車交通騒音・振動、大気汚染、公共交通サービスの赤字による衰退、交通事故の増加などが顕著となっている。さらに近年では、地球環境保全のためにCO2排出削減の観点からも自動車交通対策が求められる事態となってきた。そこで、ここでは20年後の都市交通計画の目指すべき方向について公共交通サービスの増強方策の必要性とそれを実現するための公的補助金の確保策を中心に検討する。

2 わが国の交通手段別輸送割合の推移

 わが国経済の高度成長が進展した1965年から安定成長、停滞にいたる1995年まで、自動車保有台数は’65~’75年の10年間には約3倍、’75~’85年の10年間には約1.7倍、’85~’95年の10年間には約1.4倍という増加を示し、2000年には2人に1台以上、約7千万台までに増加し、旅客の人㌔単位の輸送分担状況は、1980年の自動車55%、鉄道40%から2000年の自動車67%、鉄道27%になっている。

3.私的交通手段と公共交通サービスの関係

 都市内の交通手段には、マイカー、オートバイ、自転車などの私的交通手段と都市鉄道、バス、路面電車、タクシーなどの公共交通機関とがある。これらの交通手段の中で都市鉄道、路面電車は専用軌道を持っているが、その他の交通手段は道路を共同利用することになっている。道路は公共空間であるので、人々が公平に利用することを原則とすべきである。すなわち、一人当たり道路空間占有面積が平等になることを目指すべきであろう。この観点から見ると、道路上では一人当たりの占有面積が小さくなる可能性のある公共交通機関を優先通行させることを原則とすべきであるといえる。

 また、すべての人に公平に輸送サービスを提供するという観点から、私的交通手段の輸送サービス水準と公共輸送機関の輸送サービス水準をほぼ等しくする必要がある。このためには、公共輸送サービスを現状よりよくする必要があるが、現在の独立採算を原則とする制度の下では、多くの公共輸送サービスの提供機関は赤字経営に悩まされており、サービス改善は難しいのが実情である。

4.公共交通施設の整備・運営の財源

 公共交通施設である地下鉄やバス輸送の整備・運営のための財源を名古屋市の例で見ると以下のようになっている。地下鉄の建設費は国と地方自治体の補助金の合計が73.2%で、残る26.8%を企業債としてまかなっている。そして、企業債は旅客収入によって弁済されることになっている。平成9年度の地下鉄事業の収入に占める公的補助金の比率は15.2%で、赤字額は248億円で総支出額の23%を占め、累積赤字は3,324億円に達している。名古屋市営バス事業の平成9年度の収入に占める公的補助金の比率は23.6%で、赤字額は54億円で、総支出額の13.3%を占め、累積赤字は327億円に達している。名古屋市のような大都市でさえ、このように公共交通サービスは公的補助金があっても赤字経営であることを考えると、一般の市町村における公共交通サービスの運営は極めてむずかしい状態にあるといえる。公共交通サービスが人々の生活に必要不可欠な社会資本の1つであることを考えると運営方法の合理化を図ることを前提条件として、赤字額は公的補助金と利用者負担金で、補充されなければならない。このとき、利用者負担金は利用料金として設定されるもので、自動車保有者が、公共交通サービスを利用してもよいと考える料金水準を目安として設定すべきである。

5.公共交通サービス運営のための公的補助金の確保策―財政システムの転換誘導策の提案

 鉄道やバス輸送サービスなどの公共輸送のためのサービスを自動車交通サービスと同水準に保つためには、公的補助金が不可欠であるといえる。公的補助金としては、税金として集められたお金を公共輸送サービスへ配分することが考えられるが、これまでのわが国の行財政システムの下では、これを適切に実現することができないことが実績によって示されている。そこで、わが国の財政システム、すなわち税制の改革により、社会システムの変革を誘導する方法を提案する。

 現在の財務省の国家予算の各省庁への配分比率は過去10年間ほとんど変化していないが、これは、同省の歳出額配分機能が社会のニーズに柔軟に対応できないことを示している。そのため、国家予算配分機能の国民による補完を目指して、税金の一部(12%)を特定の公的事業の実施組織への寄付金として納めてもよいという税制を採用することを提案する。

 具体的な寄付金の納付方法は、従来と同様に納税し、そのうちの一部を寄付金として納入先を指定することにする。すなわち、税金の一部分の用途を納税者が指定できる方式を採用するのである。このような税制改革ができれば、公共輸送サービスへの公的補助金の受け皿としては各都道府県単位の公共交通運営機構を作り、ここに寄付金を受け入れ、これを都道府県内の公共交通サービス運営企業へ配分するものとする。そして、この寄付金が35年間以上続いたら、財務省の国家予算の配分でその水準が落ちないよう他の用途の配分金を一律カットして保障するものとする。このようにすれば国家予算の配分方法を社会のニーズに適応させることが可能となる。納税者が税金の用途を指定できる額を12%におさえるのは、従来の国家予算の用途を急激に変えると種々の問題を起こすので、これを避け、徐々に変える方式をとるためである。

 このように国家予算の部門別配分額の数%をカットして、各部門へ国民のニーズに合致するように再配分することを繰り返せば、Incremental Assignment 法を適用していることになり、最終的に最適配分に到達することが期待できるので、この方式を硬直化しやすい行財政機構の自己改革システムとして組み込むことを提案する。このシステムは公共交通サービスのための公的補助金の確保のみならず、すべての公的サービスのための公的補助金の確保策に活用できる。なお、この方式を活用すれば不要となった公的サービスの淘汰もなされるという利点もある。

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