地区内交通計画

持続可能な近隣住区社会の交通計画のあり方

             [高速道路と自動車 2007年月号 時評]

 20世紀の後半、わが国は経済の高度成長に伴う急激な社会の変化を体験した。そして、この50年間の交通の実態における最大の変化は、モータリゼーションの進展であった。

 モータリゼーションの進展は人々に移動の自由をもたらし、その結果として、土地利用の分散化や人々の個人主義的思考の助長といった、都市計画や人々の行動様式に種々の影響を与えた。また近年では、地球環境の持続可能性のためにCO2排出削減の観点からも自動車交通対策が求められるようになってきた。さらに我々は、地球環境の持続可能性のために、人間の社会システムそのものの持続可能性を考えなければならない事態となってきた。

 人間は社会的動物であり、人々が協力することにより高い文明と文化を築いてきた。現代人は、その恩恵を享受している。このような社会が築けたのは、人々が利己的に幸福を追求したのではなく、他者の幸福も考えた慈悲の行動や、他者との双方向的な協力のもとに社会を形成してきたからに他ならない。従って、我々はこのような社会の基本的なあり方を、次世代を担う子ども達に十分理解させることが、持続可能な社会を作るための必要条件であることがわかる。そこで、子ども達にも身近な社会環境である近隣住区社会を取り上げ、持続可能な近隣住区社会の交通計画のあり方について考えてみよう。

 従来の都市交通計画では、一部の例外を除いて人々の自動車利用性向をほぼ無制限に認める計画を策定してきたが、本来、都市空間の活動主体は人間で、人と車が共存する場では、歩く動物である人間の行動を優先する空間を整備すべきである。従って、人々が社会・経済的活動をする場、特に近隣住区においての自動車利用に対し、新たに規制を設けるべきと考える。

 近隣住区内は、子どもが自由に遊べる空間として利用されてきたが、自動車の普及に伴い、地区内の道路から子ども達が排除されて久しい。一般に小中学校では、同学年の子どもの教育が行われるが、近隣住区では、異年齢の子どもが集まり、遊びを通して社会性を育む場であった。つまり、モータリゼーションの進展は、近隣住区から子どもの遊び場を奪い、そのことで住民との触れ合いを希薄にし、さらに様々な人との付き合いを通じて生きる知恵を体得することで、地域社会を継承可能にしていた “実践の場”を奪ってしまった。これらが、社会の持続可能性を破壊していると考えられる。

 そこで、持続可能性のある近隣住区社会を構築するために、以下のような交通計画を提案したい。

“人間は歩く社会的動物である”という人間社会の根源に立ち返り、都市計画の基本単位である近隣住区(小学校区)内では、原則として緊急自動車以外の進入を制限する。緊急自動車としては、救急車や消防車のほか、高齢者や乳児などを乗せた車、および引越用大型荷物運搬車両や、日常の買い物の荷物などを運ぶ宅配サービス等の物品配送車両を含めるなど、地域住民との調整によりこれを定めるものとする。具体的には、近隣住区周辺のオープンスペース内に駐車場を設置し、車はそこへ駐車し、地区内へは原則として徒歩または、自転車で入ることを一般化する。

 自宅まで自動車を乗り入れることに慣れている人々に、この方式を受け入れてもらうのには多くの困難が予想されるが、人々の諸活動を徒歩や自転車で行うことで、交通事故の危険をはじめとする車の負の側面を少なくできる。こうした利点と無制限の車利用の弊害を、数年かけて人々に根気よく説明し納得してもらう必要はあるかもしれないが、近隣住区社会の持続可能性を壊しつつある今こそ、上記対応策を緊急に実施すべき時と考える。

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