社会資本整備システム

社会資本整備システムの改革を期待

 社会資本をその果たす役割によって分類すると,生活環境施設,交通通信施設,産業基盤施設,国土保全施設,農林漁業施設などに分けられる。これらのうち,国土交通省は,生活環境施設,交通施設,国土保全施設などの整備を担当している。これらの社会資本は地域社会の物理的構造の主要構成要素であるため,社会資本整備は地域をつくっていることに等しいといえる。

 従来のわが国の社会資本整備は,社会に需要がありその不足が明白な施設を整備する,すなわち需要追随型の整備が一般的であった。このような時代には,施設整備の優先順位付けは,不足量の多い順につければ,その効果も比例して大きいのでそれほど難しくなかった。

 しかし,社会資本の整備がある水準まで進んでくると,人々は社会資本投資の効率性だけでなく、整備水準の公平性に注目するようになる。社会資本サービスの公平性を達成するためには,その最低必要水準,すなわちシビルミニマムを明らかにする必要がある。各地域の社会資本の整備水準は,その地域社会の需要水準と最低必要水準の高い方の整備水準とすべきである。そして,人々は社会資本サービスの公平性が達成されているかどうかを知るためには,社会資本の整備プロセスの公開も要求するようになっている。

 これらの要請にこたえるためには,社会資本の整備計画の策定と決定過程を公開する必要がある。このような情報公開に耐える社会資本の整備方法はいかにあるべきであろうか。

 まず、社会資本は国土や地域社会がその住民の豊かな生活を実現するための手段,すなわち共同利用施設であるので,それに対する需要の基になる21世紀のその地域の住民および来訪者の社会・経済活動の状況を的確に予測する必要がある。そして,社会・経済活動と各種社会資本の整備水準との関係を20世紀100年間の実績データに基づいて分析し,望ましい地域社会を実現するために必要な各種社会資本のサービス水準を明らかにする必要がある。このとき,社会における各種資源を社会資本整備と民間資本整備にどのような割合で分配するのが,今後50年間において最適であるのかといった観点や,社会資本整備の中でも,社会福祉関連,生活環境施設,交通通信施設,国土保全施設,農林漁業施設にどのように分配するのがよいのかといった観点から評価できる費用便益分析システムを構築することが必要である。このような内容を持った大規模なシステムも現在のコンピューターの能力を利用すれば,構築可能となってきているので,多少の問題点は残るであろうが,客観的な分析モデルを作成し,それによって将来に対する判断を下すべきである。

 このような原則的課題は全国的に取り上げるべきであるので,ある地方だけでは実行が困難であるという反論がありうるが,かつて建設省中部地方建設局は,社会資本整備へのシビックデザインの導入において全国をリードし,その実施を進めた実績があるので,地方の時代といわれる現在,いま一度,中部地方整備局をはじめとする各整備局が,上記の社会資本の整備システムの改革にリーダーシップを取ることを切に期待する。

 社会資本の整備および維持管理は主に官公庁によって行われるが、一部分は民間組織や個人によっても行われる。たとえば、道路とその上を走る交通機関であるバス輸送網についてみると、道路は建設省と地方自治体が建設・維持管理し、道路上の交通規制や信号機の設置と維持管は警察庁が担当する。さらに、バスは市の交通局や民間会社が運行するが、この輸送業務は国土交通省の管轄下におかれている。このように、バス輸送施設一つを見ても、構成する施設ごとに建設・運営・管理する主体が異なっており、これらの主体間の相互調整がうまくゆかなければ、施設の機能は十分に発揮されない。したがって、社会資本の整備に係わる主体が各施設の最終目的を最も効率よく達成できるような相互調整のための体制を作る必要がある。この体制がうまく機能すれば、省庁間の縦割り行政の弊害は取り除かれることになる。また、社会資本は整備されたものを適切に維持管理し、必要に応じて更新することによって初めて十分機能を果たすことができる。このとき、上述のバス輸送の場合のように多くの施設をうまく相互調整して最大の機能を発揮させることが重要である。したがって、このような施設の総合的な維持管理体制を作り、機能させる必要がある。また、今後は、社会の情報化、活動の高度化にともなって社会資本の提供するサービスの信頼性に対する要求が高まるので、この点に対する配慮が必要となる。

 また具体的政策たとえば所要時間、運行間隔や料金の変化が人々の交通選択にどのような変化を与えられるかを分析し、現状から理想状態へ移行するための最適料金等の政策を求め、それを時間的経過の中で着実に実施し、場合によっては料金設定と人々の反応の観測結果に基づく応答的対応策をとりながら最適交通状態へ誘導するという動的交通政策を採用する必要がある。この動的交通政策をテレビや新聞などで人々に十分認識してもらうよう努めることが政策を成功させる鍵と考える。  このように最適交通計画へ移行するための動的交通政策の採用こそ最適社会資本整備のための最も重要な方策と考える。

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