持続可能都市計画                             

都市交通計画の最終目的:持続可能な地域社会の構築

本文は2006年の豊田交通研究所の年報に寄稿した報告の一部に加筆したものである。

 都市交通計画の最終目的は、人々の豊かな生活の実現であり、人々の望む多様性のある生活を送れる条件を交通の面から整えることである。豊かな生活とは、安全で経済、時間、空間、心の面でゆとりを持ち、多様性のある生活を将来にわたって安定的にかつ世代を越えて継続的に送ることができることと考えられる。これは都市計画の目的と一致するものであって、したがって、都市交通計画は都市計画と一体的に実施することがその目的を達成するための必須条件であることがわかる。

 しかし、従来のわが国の都市交通計画においては、都市内の各種都市施設配置との連携が十分に行われず、都市施設と交通施設の両者の機能を十分に発揮できないという事例が多数見受けられたのは、残念なことであった。

 また都市は人々が生まれ、学び、働き、子供を育て、交流し、老い、やがて死に至る一生を送る場であることを強く意識した都市交通計画を策定すべきであるのに、幼児、子供や老人の生活への配慮は十分なものではなく、このような事実が、少子化の原因の一つとも考えられる。

 人間は社会的動物である。世代を超えて人々が協力することにより高い文明と文化が築かれてきた。現代人はその恩恵を享受している。このような社会が築けたのは人々が利己的に自分のみの幸福を追求したのではなく、他者の幸福も考えた慈悲の行動、あるいは他者との双方向的な協力をしてきたからに他ならない。したがって、我々はこのような社会の基本的なあり方を次世代を担う子供たちに十分理解させることが大変重要であることがわかる。

 過去20~30年間の都市における子供の養育システムを見ると、地域社会における年齢の異なる子供同志の遊びを通しての社会性などの教育、具体的には子供会活動などがきわめて少なく、これが青少年の社会性の育成に多くの問題を引き起こして、少年犯罪の増加の一因になっていると考えるのは、見当はずれの見方であろうか。

  都市交通計画の最終目的は人々が快適な生活をできる持続可能な社会の構築を支援することである。すなわち、持続可能な地域社会を作ることである。この持続可能な地域社会、地区の備えるべき条件をまとめると次のようになる。

サスティナブル コミュニティ、持続可能な地域社会(近隣住区)の基本的条件
 持続可能な地域社会すなわち地区計画の保持すべき基本的条件を米国での検討例を参考にして列挙すると以下のようになる。

(1) 地域のアイデンティティとその世代間の継承
  人と人とのつながり、それを育成する公共施設、歴史、地域の特色、文化とそれらを次世代へ継承するシステムをもっていること。子供会、町内会活動、住民自身が都市計画を決定するシステムなどをもっていること。

(2) 自然との共生
  地区が自然生態系と調和していること。地区の境界に自然を導入し、レクリエーションや市街地の環境保全、食糧供給などに活用する。

(3) 自動車の利用抑制のための交通システム
  わかりやすい格子型道路網、公共交通施設と歩道、自転車道の整備。日常的かつ基本的な活動である通勤・通学・買物・レクリエーションなどが徒歩・自転車や公共交通機関によって行えること。

(4) 混合土地利用
  住宅の環境保全に配慮した建物の混合用途使用による職住近接と治安の確保を図ること。

(5) オープンスペース
  人々が集まり交流できる空間すなわち公園やグリーンベルトなどとして土地の環境保全に役立つオープンスペースを持つこと。

(6) 多様性のある住宅による地区の構成
  所得、家族構成の異なる人々が住めるようにする。地区内に幼児から高齢者までが住み、相互交流が容易に行えるようにすることが、地域文化の伝承にとっては不可欠の条件である。

(7) 省エネルギー・省資源
  エネルギー、水、廃棄物、食物、居住などにおける省エネルギー、省資源を目指す。

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