果物の味・フードマイル・食育

果物の味とフードマイル

果物の味とフードマイル

 郷里の母が自宅でとれた赤く熟した富有柿を送ってくれた。母は高齢で、自分で柿を収穫することはできず、広島と横浜に住んでいる二人の妹達が訪ねて柿を獲ってくれ、それを母が送ってくれたのだった。

小学6年と2年生の二人の孫に食べさせたところ、「いつも食べるのと食感が違う」と言って、少し食べて「もういい」と言う。“何故この旨さがわからないのか?”と思っていたところ、彼等の母親である娘が、「スーパーで買う柿は堅くて、薄味で、それに慣れているので、こういう反応になったのだと思う」と解説してくれ、納得した。

なお、彼等に数日柿を食べさせ、一箱食べ終わる頃には、その味に納得し、満足して食べるようになった。

 最近、スーパー等で売られている柿は、四角で、色も薄く、一定の甘さはあるのだが、熟した柿の甘さではない。これは、おそらく、品種改良によって、箱詰めし易い四角形で、完熟でなくても一定の甘味のある柿を開発し、それを販売するようになったのだと思われる。

従来の富有柿は、赤く色付いた時が濃い甘味を出し、美味しくなるものであり、それをさらに木に生った状態で熟させると、ゼリーのようなトロみを帯びた『熟し柿』となって、別の果物の観を呈するのだった。しかし、現在の市場に出回っている柿は、市場での取り扱い易さや、得られる利益の大きさを追求した結果であると思われるが、柿本来の熟した味や特性を、最大限に生かしたものになっていない。

それでは、人々が熟した柿を味わえるようにするためにはどうすればよいのだろうか。その答の1つは、柿の生産地の近くで消費する、いわゆる地産地消方式の導入であろう。この方式は、大量生産・大量消費には向かないため、生産コストについては多少高くなるであろうが、従来よりも、美味しい本来の柿の味を楽しむことができるようになる。同時に、生産地から消費地までの輸送距離(フードマイル)が減少し、輸送によるCO2発生量を削減することになり、地球環境を考える上でも、望ましいことである。

地産地消方式を実現する具体策の1つとしては、生産者が道の駅などの施設に、安価な使用料負担で、生鮮産物を持ち込み販売できるシステムを構築することが考えられる。この際、商品に生産者名を付け、その品質などの保証を確保することが必要であると考える。

 例えば、桃の場合、完熟し、軟らかく美味しいものに商品価値はなく、熟していない固いものが商品として市場に出されるのが普通となっている。従って、一般の人々は、桃の本来の味を味わっていない。  

30年前に、私の実家でとれた完熟した桃を食べた私の娘達は、桃本来の味を知っているが、現在では、実家の桃の木から桃の実がとれなくなったので、私の孫達は、一般市場に出回っている桃しか食べたことがなく、完熟した桃の味を知らないのが現状である。食育を考える上でも、利潤追求のための過剰な品種改良については、是正する必要があるように思う。

 このように現在の子供は、食材の本来の味を知っていないといえる。地産地消方式を採用すれば、食材は地域で収穫できる時期(食材の旬)に市場に出てくることになり、その地域の人々は食材本来の味を味わうことができるようになり、子供達もその恩恵を受けられるようになる。最盛期の食材は最も栄養価が高いと言われることから考えても、食材をその旬に本来の味で食べることは、食材そのもののもっている栄養素を十二分に生かし、摂取することが可能になる。食べる者の身体にも良いと考えられ、かつ、食育の目的の1つでもある、正しい味覚を育てることにもつながる。

 このような地産地消方式は、柿のみならず、桃などの果物や鮮魚、野菜などの生鮮食品全般に採用すべきもので、これによって、日本各地にある地元の産物が市場で取引されるようになり、現在耕作放棄されている農地の有効活用などの道を開く可能性があると考えられる。

 現在、私は郷里の浅口市の都市計画を検討する委員会に参加しており、わが国の典型的な地方都市の1つである浅口市における、土地利用の約20%の農地に対し、耕作放棄されている農地が約35%を占めていることを知った。 なお全国平均では、この耕作放棄農地比率が約8%となっている。このように、現在耕作放棄されている農地を活用することは、農業従事者の高齢化など構造的問題を含み、簡単に解決できる問題ではないが、うまくゆけば食糧の自給率の向上にも寄与することになり、また、農村の活性化にもつながることとなろう。

そして、現在増加しつつある団塊の世代の退職者のうち野菜などの栽培に興味のある人たちがこの地産地消方式の農業に参入できるようなシステムができれば、退職人材の有効利用と耕作放棄農地の有効活用、CO2削減および食料自給率向上などにつながることになろう。

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