岡本の都市計画:公共交通指向開発地区
神戸市東灘区岡本の都市計画
私は、名古屋大学退官を契機に郷里に近く、娘たちの住んでいる神戸市東灘区岡本に転居しましたが、ここは六甲山が最も海側にせり出した所で、ここでは阪急、JR、阪神の3鉄道路線を中心とし、両側を瀬戸内海と緑豊かな六甲山に挟まれた線形都市が形成されており、これが理想的都市計画の基本形の一つであることを体験的に発見することができました。車なしの生活が考えられなかった名古屋市名東区と違って、我が家の車は車庫に止まったままでほとんど乗らないので、売却してしまいました。日常の買い物は徒歩ででき、神戸三宮都心へ15分、大阪都心へ25分、標高700米以上の六甲山山上へ30分、新幹線新神戸駅へ25分、新大阪駅へ35分で、すべて鉄道で到達できます。交通および買物の便や緑地配置だけで都市計画を評価することはできませんが、約6年間住んでみた住み心地は極めてよいものですので、ここを対象として理想的都市計画のあり方を実証的に探求することをこれからの研究テーマにしようと考えています。
神戸市東灘区岡本地区は欧米の都市計画で近年注目されている公共交通指向開発TOD(Transit Oriented Deveropment)のわが国における先駆的事例の一つと考えられます。
図-1 「TODの概念図」をダウンロード
※平均歩行距離が約600mということは、これが快適な歩行距離10分前後であることによる.なお、この距離は地形,天候,幹線道路や高速道路などによる干渉,他の物理的環境の特質等により影響を受ける. 適正なTODの規模は,その環境条件により変化させる必要がある.そこでTODは,都市型TODと近隣地区型TODと2種類に分けて定義されている.
①都市型TOD
都市型TODは,軽軌条鉄道(LRT),重軌条鉄道(HRT),高速バスの駅周辺といった公共交通ネットワークの幹線沿いに位置する.都市型TODでは,高密度の商業集積,クラスター状のオフィス,中・高密度の住宅地が一体的に開発されなければならない(図-2).
図-2「都市型TOD」をダウンロード
②近隣地区型TOD
近隣地区型TODは,公共交通の幹線駅から乗車時間10分以内(約5km未満)の地区内バス路線沿いに位置する.中密度の住宅,サービス施設,店舗,娯楽,レクリエーション,公共施設などの用途が主となる(図-3).
図-3「近隣住区型TOD」をダウンロード
また,TODを実現するため,都市施設の配置について,拠点商業地区,住宅地区,公共用途,波及地区,その他の用途の5種類に分けて,それぞれのあり方が提案されている.
①拠点商業地区
いずれのTODの場合でも,公共交通の駅に隣接して複合用途からなる拠点商業地区がなければならない.そこには地区生活に最小限必要な店舗とオフィスが立地しなければならない.拠点商業地区の規模が大きくなれば,大手スーパーマーケット,レストラン,サービス業,娯楽施設,競合する独立店舗,下駄履き住宅(1階非住宅),地区内就業の場としてオフィスや軽工業などの用途を複合することも可能である.
②住宅地区
TODの住宅地区には,拠点商業地区や駅から無理なく徒歩で行ける範囲内にハウジングが配置される.住宅地区の密度は,小規模な戸建て住宅,タウンハウス,コンドミニアム,アパート等多様なハウジングの種類に見合うものであることが必要条件となる.
③公共用途
公共用途とは,TOD地区やその隣接地区の居住者やそこで働く人達のために供する用途である.公園,広場,緑地,公共施設がそれに該当する.小規模の公園や広場は,その地区の住民のニーズに応えるものでなければならない.
④波及地区
それぞれのTODには,TOD地区に隣接して波及地区があり,それには拠点商業地区から1.6km以内にある幹線道路の反対側の地区も含まれる.波及地区の街路網には,幹線道路とあまり交差せずに公共交通の駅や拠点商業地区へ直接通じる街路や自転車道路が含まれる.波及地区には,低密度の戸建て住宅,公立学校,大規模コニュニティ公園,就業者の少ない業務施設,パーク・アンド・ライド駐車場などが配置される.(図-4参照)
図-4「波及地区」をダウンロード
⑤その他の用途
乗用車,トラックへの依存が極端に高い用途や雇用をあまり創出しない用途は,TOD地区や波及地区には適さない.田園型住宅地,工業関連施設,観光関連複合商業施設は,TOD地区や波及地区の外に配置されるべきである.
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