都市計画における線引き制度の廃止の検討事例
わが国の都市計画制度の特徴の一つであるスプロール抑制のための線引き制度の廃止を視野に入れて都市計画のあり方を検討したので、ここに紹介する。
岡山県浅口市は2006年3月 金光町、鴨方町、寄島町が合併して誕生した。そして2007年8月16日から浅口市まちづくり将来像検討委員会が設置され、まちづくりの将来像が検討された。この検討過程で、新市域はわが国の最も進んだ都市計画制度である市街化区域と市街化調整区域の線引きがなされた金光町と都市計画区域は指定されているが、用途地域指定のなされていない鴨方町、都市計画的規制のほとんどない都市計画区域外の寄島町からなっていることが明らかになった。これは、浅口市がこの約100年間にわたるわが国の近代都市計画の進展の全過程を含んでおり、これを一つの市としてまとまった都市計画に構成することの難しさを示しているといえる。
なお、全国の都市計画区域指定市町村比率が62.7%(2001年度)であることからみて、三分の一以上の市町村にはこのような都市計画の不備を含む問題が存在していると考えられる。
そして浅口市の都市計画行政の課題の1つとして、合併時に金光町町民から線引き制度の廃止の要望が出されており、これの取り扱いが最難関事項であった。
このような事情の下、私はこの検討委員会委員長として、約1年間かけてまちづくりの将来像を検討し、報告書を作成し市長に提出した。その概要は以下のようなものである。
浅口市まちづくり将来像検討委員会は、都市計画、農政、商業・経済、医療・福祉の各分野を専門とする学識経験者の委員で構成され、浅口市における土地利用、都市計画の現状を踏まえた、市の一体的なまちづくりの方針と目指すべき都市将来像について調査検討することを目的に、2007年8月に設置された。そして、4回の検討委員会を持ち、市の都市計画について問題点を多面的に調査し、今後のあり方を検討した結果を報告書としてまとめ、ここに提出する。
この内容を要約すると以下のとおりである。浅口市は、総合計画において「快適・安心・思いやり活力あふれる文化創造都市」を将来像として示し、各分野の施策によりその実現を図っており、土地利用においても市の一体性を構築し、魅力的なまちづくりを推進することとしている。市民意向調査で、良好な環境の中で豊かに居住できる都市が望まれていることなどを踏まえ、都市計画においては「自然、歴史、風土に育まれる生活創造都市」を将来都市像として取り組むことが望ましいと考えた。
浅口市の都市計画の現状は、岡山県南広域都市計画区域の一部で線引きされた金光、里庄町とともに鴨方都市計画区域を形成し非線引きの鴨方、都市計画区域外である寄島、このように市内に都市計画区域の枠組みの違いと、それに伴う土地利用の規制・誘導方式の違いがある。
これらの都市計画区域の枠組み等は、昭和40年代の高度成長期に定められたもので、人口減少や高齢化等の今後予想される新たな変化への対応の観点から、都市計画の見直しが必要と考えられる。
見直しにおいては、地域の特性や市民の意向を踏まえて、統一性や都市・農業・自然的土地利用の調和に配慮するべきで、都市計画区域、区域区分及び用途地域等の都市計画の制度導入の考え方を明きらかにし、将来の都市像の実現のため、都市計画区域の再編も含めて検討する必要がある。
浅口市の今後の土地利用については、経済的発展と生活創造都市形成に向けて、市域としての拠点、都市軸の設定及びゾーニングによる適切な土地利用の規制と誘導を図り、ゆとりと賑わいが持続する調和のとれた土地利用が図れるよう適切な措置を講ずるべきである。
望ましい土地利用の規制・誘導方策としては、次のようにすべきと結論付けた。
既存の都市計画区域については、浅口市金光町及び鴨方町と隣接する浅口郡里庄町が一体となった浅口都市計画区域(仮称)として再編するとともに、浅口市寄島町に準都市計画区域を設けることが望ましい。再編時には、統一性のある土地利用の規制・誘導方策を採用し、区域区分(線引き)を行わない都市計画区域として統一していくことが妥当である。また、地域の合意によるまちづくりのためのルールづくりを推進し、新たな用途地域の指定、地区計画の導入等に積極的に取り組み、生活創造都市の実現を図るべきである。
なお、都市計画の実践においては、制度や施策を継続的に評価し必要な見直しを適切に行うことが大変重要である。
本答申が十分活用され、浅口市の望ましい将来像形成に生かされることを期待する。
なお、わが国での線引き制度の廃止の事例としては和歌山海南都市計画区域、香川中央都市計画区域、笠岡都市計画区域(検討中)などがあるが、線引きの決定権者は都道府県であるので、市独自で決められないという問題点がある。
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