パーソントリップ調査の意義と役割

パーソントリップ調査の意義と期待される役割

本文は平成12年頃、国の財政難から大きな調査費用のかかるパーソントリップ調査を継続すべきかどうかという問題が提起され、それに対して私の意見を中京都市圏パーソントリップ調査協議会の席で述べたものを修正加筆したものである。

1.パーソントリップ調査の意義

 パーソントリップ(PT)調査は交通の主体である人に着目し、世帯および個人属性、自動車保有状況に加えて、1日に行った全交通の目的、起終点、利用交通手段、発生・集中時刻、所要時間などをアンケート用紙によって調査するものである。

 PT調査によってはじめて個人の交通行動が把握され、人の1日の生活と交通との関係を直接的に把握することができるようになった。

 また、従来、道路と鉄道利用の交通は別々に調査されていたのが、PT調査によって都市圏の交通体系全体の人の交通現象を一体として総合的に把握できるようになった。

 さらに、継続的にPT調査が行われたことによって、交通の時間的変化が明らかになり、交通の将来予測精度が飛躍的に向上した。

2.交通施設整備計画とPT調査

 交通施設整備計画のあり方と調査・計画費用との関係

 交通施設整備に際して調査・計画を的確に行えば、交通施設の建設・運営費総額を減らすことにつながり、また社会的な基盤整備事業の費用便益面から見た効率を上げることができる。反対に、調査・計画費用を削ったため、もし、不十分な施設整備計画しか策定できず、それに基づいて施設整備が進められれば、無駄や手戻りが発生し、全体としてはより大きな費用を必要とする事態になりかねない。

3.PT調査に期待される役割

 前述のようにPT調査に基づいて将来の交通計画および対策を策定することが、PT調査結果の活用法の根幹をなしているが、現在では、PT調査は整備された交通施設の利用のされ方や実施されている各種交通対策、政策、情報提供などの効果を把握するための機能を有していることに、より着目すべきであろう。

 社会基盤施設である交通施設の整備効果を把握するためには、その利用実態をPT調査や物資流動調査によって明らかにすることが必要不可欠である。特に、交通施設への投資順位を決定する際に必要となる費用便益分析のための需要階層ごとの所要時間や施設別利用交通量を知ることができる点は、利用者ニーズに対応したきめ細かい交通計画や交通施設運用策の策定につながると考えられる。

 また、将来の適切な交通施設の整備計画を策定するためには、それに対する需要と人々は何に不満を感じているか、どのような交通サービスなら満足するかを理解し、現在の経済的制約と技術水準の下で最も望ましい交通サービスを提供することを考えた交通計画とは何かを明らかにする必要がある。このような要望に応えることができるPT調査を企画する必要があるといえよう。

地球環境の改善への対策(自動車利用から公共交通利用への転換促進)

交通に関して地球環境対策を考える必要性が増大しているが、その一つが自動車利用から公共交通利用への転換促進を図ることである。人々はその内容を知らない交通サービスを利用することはできない。したがって、公共交通の利用促進を図るためには、そのサービス内容(経路、運行頻度、所要時間、料金など)を人々がよく知っていることが必要である。人々が公共交通サービスの内容をどの程度知っているかを調査するのもPT調査の役割に加えるべきである。 特に、自動車利用者が公共交通サービスの内容を知っているかどうかを調査できる点が重要である。

継続的交通調査の必要性

社会環境およびそれに対する人々の意識は時代とともに変化しており、これらの交通行動に与える影響も当然変わるので、それらの様子を時間を追って調査する必要がある。

PT調査を定期的に行うことは、交通に関わる社会環境や意識の変化を総合的、継続的に捉えることができ、交通行動の将来予測の精度の向上を図ることができるようになる。

結論的に言えることは、変化し続ける交通の実情を知らずして、適切な交通計画や交通対策を立てることは不可能であるということである。交通行動を総合的に捉える調査であるPT調査の重要性は従来より増しているといえよう。

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